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「患者さんの暮らしぶりに関する情報を把握するための、簡易質問項目の開発に関するパイロット研究」Vol.1 APR. 2020

 

Ⅰ. 研究の目的及び意義

(1)研究の背景及び目的
 近年、健康の社会的決定要因(SDH)に関するエビデンスは膨大に蓄積されています1)。貧困や学歴などのSDHが、脳心疾患や糖尿病など多くの疾病の原因となっていることが明らかにされています。日本においても、主に公衆衛生領域でSDHに関する関心が広がっています。
 しかしながら、我が国においては、SDHに関するエビデンスから得られた知見は、臨床の場で社会経済的に困難を抱える患者の評価と支援には十分には生かされていません。
 その主たる原因は、臨床家の中でSDHに対する関心が現時点では低いことに加え、社会経済的な情報を患者から診察時に聞き取ることが、センシティブな個人情報であるので容易ではないことにあります。しかも、社会経済的な情報の聞き取りには時間を要することも、問診を試みる場合に生じる障壁となっています。
 つまり、患者の社会経済的な状態を、短時間で、しかも、プライバシーにも配慮し容易に診察時に活用できる質問項目があれば、患者の社会経済的な問題の評価が促進されると考えられます。
 先行研究として、海外ではカナダのVanessa Brcicらは、社会経済的状態の中で貧困状態に焦点を絞った問診項目を開発する研究を行っています2)。カナダのプライマリケア施設を受診した患者を対象に実施し、「月末のやりくりが大変ですか」という質問項目が、最も貧困線以下の患者を把握するのに感度が高かったということでした。
 そこで、日本においては同様の研究がないため、Vanessa Brcicらが開発した、カナダの質問項目を参考に、患者が貧困状態にあるか否かを把握するための簡易な日本版の質問項目の開発を行うことにしました。
 共同研究に参加した施設の入院および外来患者を対象に、質問紙法により複数の社会経済的な状況を尋ねる質問項目と世帯収入を調査します。そして、貧困線以下の患者を拾い上げるために最も感度の高い質問項目を明らかにすることを目的にしました。さらに、その目的を拡張し貧困線と社会関係や学歴といった要素との関連を把握することにしました3)。
 さらに、本研究で開発された質問項目も加え、患者の社会経済状態を含めた問診票を開発し、電子カルテを利用し日常診療で活用されるように提案することを将来的な課題としました4,5)。
(2)対象と方法
対象は、健生病院(弘前市)、西淀病院(大阪市)、千代診療所(福岡市)、埼玉協同病院(さいたま市)、勤医協札幌病院(札幌市)の5つの医療機関を2017年9月11日から12月31日に新規に受診した患者で、調査に同意した20歳以上の患者です。
自記式の質問紙調査及び診療録の情報を利用して必要な情報を収集し解析しました。
(3)研究実施体制
日本HPHネットワークの「貧困介入支援ツール研究班」として、本研究を実施しました。

 

Ⅱ. 研究の成果
(1)国内学会での発表
2018年 第9回日本プライマリ・ケア連合学会総会:「患者の経済状態を把握するための簡易質問項目の開発」大髙由美(健生病院)ほか
2018年 第59回日本社会医学会総会:「患者の経済状態を把握するための,簡易質問項目の開発」大髙由美(健生病院)ほか
2019年 第60回日本社会医学会総会:「経済的な理由による受診控えをする患者をスクリーニングするための問診項目の開発」中司貴大(千鳥橋病院)ほか
(2)国際学会での発表
2019年 THE 28TH INTERNATIONAL CONFERENCE ON HEALTH PROMOTING HOSPITALS AND HEALTH SERVICES (HPH) : Development of Interview Items for Screening of Patients who Forgo Medical Care Due to Economic Reasons. Mitsuhiko Funakoshi (Chidoribashi General Hospital) et. al.
(3)論文
1論文を投稿中。

 

Ⅲ. 参考資料・文献リスト
1) Commission on Social Determinants of Health. Closing the gap in a generation: health equity through action on the social determinants of health. Geneva: World Health Organization; 2008.
2) Brcic V, Eberdt C, Kaczorowski J.:Development of a Tool to Identify Poverty in a Family Practice Setting:A pilot study. International Journal of Family Medicine Volume 2011, Article ID 812182, 7 pages doi:10.1155/2011/812182 Epub 2012/02/09. doi: 10.1155/2011/812182. PubMed PMID: 22312547; PubMed Central PMCID: PMCPMC3268233.
3) Bodenmann P, Favrat B、Wolff H, Guessous I, Panese F, Herzig L,et al.:Screening Primary-Care Patients Forgoing Health Care for Economic Reasons. PLoS One. 2014;9(4):e94006. Epub 2014/04/05. doi: 10.1371/journal.pone.0094006. PubMed PMID: 24699726; PubMed Central PMCID: PMCPMC3974836.
4) Pinto AD, Glattstein-Young G, Mohamed A, Bloch G, Leung FH, Glazier RH.:Building a Foundation to Reduce Health Inequities:Routine Collection of Sociodemographic Data in Primary Care. Journal of the American Board of Family Medicine:JABFM.2016;29(3):348-55.Epub2016/05/14.doi:10.3122/jabfm.2016.03.150280. PubMed PMID: 27170792.
5) Adler NE, Stead WW.:Patients in context–EHR capture of social and behavioral determinants of health. The NEW ENGLAND JOUNAL of MEDICINE. 2015;372(8):698-701.Epub 2015/02/19.doi:10.1056/NEJMp1413945. PubMed PMID: 25693009.

最終更新日:2020年4月8日

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