第31回国際HPHカンファレンス2026
日程:2026年5月20日~22日
会場:スウェーデン・マルメ
持続可能なヘルスケアシステムの構築:グローバルな危機の時代における健康と公正性とレジリエンスの推進のために
Creating Sustainable Healthcare Systems to promote Health, Equity and Resilience in Times of Global Crises
範囲と目的 Scope and Purpose
持続可能なヘルスケアシステムの構築:グローバルな危機の時代における健康と公正性とレジリエンスの推進のために
Creating Sustainable Healthcare Systems to promote Health, Equity and Resilience in Times of Global Crises
2026年は世界保健機関(WHO)の健康促進に関するオタワ憲章の40周年であり、批判的考察と新たなコミットメントを促す重要な節目の年です。気候変動や戦争、人口動態の変化、そして少なからず、慢性疾患やストレス関連障害、精神疾患といった社会格差・健康格差の拡大等のグローバルな課題が山積する現代において、ヘルスサービスの方向転換と、人々が自らの健康をコントロールできる能力の付与を掲げたオタワ憲章のビジョンは、今なお意義深く健在です。
また、2026年は、現在ヨーロッパで最も積極的に活動を展開しているナショナルHPHネットワークの1つであり60を超える加盟組織を擁するスウェーデンHPHネットワークの結成30周年でもあります。
第31回国際HPHカンファレンスでは、専門家、研究者、政策立案者、患者・市民、そして市民社会の代表が一堂に会し、病院やヘルスサービスがこの困難な時代において、いかに積極的に健康や公正性、レジリエンス(回復力)を推進できるかについて議論します。そして、ヘルスプロモーションに取り組むヘルスケアシステムが、包摂的で持続可能な社会への貢献者として、また、自らもレジリエンスと適応力を高めるべき存在として、担うべき二重の役割について考察します。
本カンファレンスでは、参加者が、従事する分野で実践に適用できる行動や方針、研究に関する観点や戦略を習得できるよう、全体会議やシンポジウム、ワークショップ、口頭発表、ポスター発表等のプラットフォームを通じて、エビデンスや経験、革新的取り組みを交流できるようにします。
カンファレンスのプログラムは、公正性(equity)、包摂性(inclusion)、連携 (collaboration)という横断的テーマに沿って、次の5本の主要トピックを柱として構成されます。
レジリエントかつ持続可能なヘルスケアシステムを前進させる:ヘルスプロモーションの40年
オタワ憲章40周年は、健康、公正性、コミュニティのエンパワメントを推進するため保健システムの方向転換を求める、という呼びかけを見直す絶好の機会です。今日のグローバル的危機は、ヘルスケアシステムの抜本的変革を求めています。これは、社会、環境、制度について、持続可能性の観点から、レジリエンス(回復力)を高めるだけでなく、先見性と未来志向性を持つことを意味します。このテーマで中心となるのは、労働者層の健康です。労働者層の高齢化に伴う人員不足、肉体的・精神的負担、燃え尽き症候群は、もはや別々の問題ではありません。これらは、HPHモデルの3つの主要対象群の1つであるスタッフの健康を直接的に損なう構造的リスクであり、集団のニーズに応えるシステムの能力を危うくしています。他者のケアを担う人々への支援を用意することは、適応力とショック耐性を備えたサービスを構築するうえで不可欠です。
ライフコース(生涯)を通じた健康の公正性
健康と疾患は、集団や社会に不均等に分布する様々な決定要因の影響を受けます。リスク要因への曝露が高く、医療資源が乏しい人々は、疾病の発症リスクが高く、発症が早く、早期死亡率が高いなど、全般的に脆弱性が高くなります。さらに、これらの集団は、セルフケアの管理やヘルスケアシステムの利用で苦労しており、ニーズが高くヘルスケアシステムの重要な利用者であるにもかかわらず、患者層の中でも十分なサービスを受けられていないケースが多く見られます。したがって、ヘルスサービスには、ライフコース(生涯)を通じて健康ニーズや健康格差を特定し、公正性を促進していく、重要な責任があります。このテーマでは、保健サービスが幼少期から老年期に至るまで、健康とウェルビーイングのために公平(fair)で包摂的(inclusive)な条件をどのように育成できるかを議論します。疾病予防や様々な人口集団におけるヘルスケアなど、ヘルスプロモーションに対する多様かつ進化し続けるニーズに注目し、特にヘルスサービスが行き届いていない脆弱な集団に焦点を当てます。また、より広範な健康の決定要因への対応や、人々のライフコースの局面毎に変化するニーズへの対応において病院とヘルスサービスが果たす役割についても考察します。
将来への不安、メンタルヘルス、ストレス関連障害:懸念から行動へ
近年、世界中の多くの国々でメンタルヘルスの低下に対する懸念が高まっています。これは、将来への不確実性があらゆる年齢層のメンタルヘルスとウェルビーイングにますます影響を与えているためです。社会の分断や孤独、気候不安、社会不安、武力紛争、急速なデジタル化と社会の変化に関連した精神的ストレスの増大が、複雑な心理的課題を生み出しています。これらには、精神的トラウマや過激化・暴力リスクの高まりが含まれ、特に若年層や脆弱な集団に強い影響を与えています。ストレスと精神疾患は身体疾患や不健康状態と密接に関連しているため、社会への疾病の負担も高まります。グローバルな課題の拡大という観点においては、糖尿病や心血管疾患、神経変性疾患の症状の慢性不安による悪化が増大する等、心理社会的ストレスと代謝障害の強い相互作用に注目することが極めて重要です。このように精神と身体の健康は双方向につながっており、ヘルスケア環境において効果的ストレス管理をめざす統合戦略が急務であることを強調しています。
このテーマでは、ヘルスケアとヘルスリサーチがメンタルヘルスの擁護者として担う役割について、またあらゆる政策・方針において心身の健康に与える影響について議論します。これは、社会的処方や自然の処方といった革新的なアプローチを通じて、あらゆるセクターや環境におけるメンタルヘルスの推進、メンタルヘルスリテラシーの向上、孤独感の軽減を推進することで実現できます。さらに、ケアを必要とする人々が、コミュニティの中で革新的かつ効果的なメンタルヘルスケアにアクセスできるよう、ハードルを下げるための選択肢の探求にも焦点を当てます。多様なニーズや環境に対応し、社会的孤立やリスクの高い集団に特に配慮しながら、メンタルヘルスのウェルビーイングを推進するアプローチについて検討します。
デジタルイノベーションとテクノロジーの倫理的利用
デジタル変革は、社会とヘルスケアの形を変え、情報やサービスへのアクセスと効率を向上し、患者と医療提供者のエンパワメントを実現する新たな機会を提供しています。人工知能(AI)、遠隔医療、健康アプリ、高度なデータ分析の発展は、持続可能で公正(equitable)なヘルスプロモーションを支える可能性を秘めています。しかし、こうしたイノベーションは、偽情報やデータの悪用といった倫理面、公正性、安全性に関する懸念も少なからず引き起こしています。
このテーマでは、HPHがどのように倫理的ガバナンス、プライバシー、公正性を確保しながらデジタルイノベーションを活用できるかを探ります。トピックには、AIと意思決定システムの倫理的利用、批判的健康リテラシーを含むデジタルヘルスリテラシー、誤情報対策、格差縮小に役立つ包摂的デジタル戦略の重要性が含まれます。
持続可能で公正かつレジリエントなヘルスケアシステムのためのパートナーシップの重要性 - 課題と機会
グローバルな危機の時代において、集団保健とヘルスケアシステムは、単一のセクターだけでは解決できない複雑な課題に直面しています。持続可能で公正かつレジリエントなヘルスプロモーションを可能にするシステムの構築は、全ての政策に健康という視点を盛り込む意味で、ヘルスケア組織と医療研究者や地域、市民社会、行政機関、政策立案者、企業等を結びつける強力なパートナーシップにかかっています。医療従事者は、社会で信頼される声として、所属組織の内外において模範を示し、必要な変化を効果的に提唱できる独特の立場にあります。例えば、気候変動の影響を緩和するための持続可能な実践を推進することができます。
このテーマでは、ヘルスケアサービスがどのようにパートナーと連携し、地域や社会の健康ニーズを分析できるかを検討します。ヘルスケアサービスは、この分析と、疾病や不健康の原因に関する深い知識に基づいて、健康のため部門を超えた連携を呼びかける提唱者および推進者の役割を務めます。また、より良い生活環境の発展と提供、患者中心のケアの強化、スタッフのニーズの支援、そして社会的包摂の推進におけるパートナーとして機能します。ヘルスサービスは、こうした連携に持続可能かつ拡張可能な方法で参加し育成することで、集団の健康に対する影響力を高め、レジリエントで公正なヘルスケアシステムと社会を実現するための変革を推進することができるのです。
更新日:2025年9月2日
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