公益社団法人福岡医療団 千鳥橋病院
当院の無料低額診療事業利用者の実情
~1年目MSWの気づきから~
私は2024年度に入職し、医療費面談で出会った患者さんの生活背景から、多くのことを学びました。
医療費面談をおこなう中で、医療の必要性と経済的な不安を天秤に掛けざるを得ず、頭を悩ませている方々がとても多くおられたことに衝撃を受けました。経済的な不安がいかに心情の大部分を占拠するのかについて気付けたことは、1年目の大きな学びでした。
MSWは患者さんが少しでも安心して生活できるよう、医療費面接を通して今後の生活をともに考える役割を担っていると思います。
無料低額診療事業(以下、無低事業)は、経済的な不安がある方々を「医療」へつなぐ大切な事業であり、医療費不安の解消だけではなく、SW支援にもつながっていく機会です。
重要な意義を担う事業だからこそ、安心して利用できる事業、必要な方々に届いていく事業を目指して、まずは院内で無低事業についての理解を拡めたいと考え、SW部門として下記に取り組みました。
1.2024年度の取り組み
院内で開催される「TQM&医療介護活動交流集会」にて、無低事業の説明と利用患者の統計や事例をまとめ、ポスター発表を行いました。当院(千鳥橋病院、千代診療所)の無低申請件数は、2019年度には1,000件を越え、その後も1,000件前後となっています。ポスターでは利用されている方々を、年代、保険種別、世帯構成、相談経路、就労形態ごとに集計し、MSWが注目した点を紹介しました。
また、複数名の方について医療費不安をかかえざるをえない生活実態を事例報告しました。
今日の社会情勢において、無低事業需要の高まりが予想されること、しかし必要な方々に周知されていない実情があること、そしてMSWだけでは全てのニーズを拾うことはできないため、より多くの職員に知っていただき、連携していきたいことを報告しました。
2.2025年度の取り組み
院内集会で「最優秀賞」を頂きました
昨年度の取り組みを継続し、院内で無低がどの程度理解・周知されているのかを把握し、さらなる無低事業促進を目指して職員アンケートを実施しました。
アンケート実施期間は1ヶ月でしたが351名より回答をいただきました。回答職種の内訳は、看護師(203名)、事務(57名)、コメディカル(48名)、医師(16名)、その他(29名)。回答内容は、
①無低について知っているか(はい:91.5%・いいえ:8.5%)、②患者が経済的不安を感じていると気づいたことはあるか(はい:84.9%・いいえ:15.1%)、③MSWにつないだり無低を案内したことはあるか(はい:73.6%・いいえ:26.4%)、④生活保護基準の額がイメージできるか(はい:23.4%・いいえ:76.6%)。⑤自由記載には様々な質問や意見が寄せられました。
質問等については、院内へ発行しているニュース(相談室便り)にQ&Aを掲載しました。
この職員アンケート結果をもとに、昨年度と同じ院内集会で発表を行いました。
アンケートでは“「生活保護基準」についてはイメージできない”との回答が8割ほどあったため、ポスターにはアンケート結果と、年齢や世帯等の前提条件を揃え、収入基準をA生活保護基準世帯、B無低利用世帯(生活保護基準のおおむね150%以下)、C当院職員とした3名の収支比較を掲載しました。
生保世帯、無低利用世帯ともに様々な選択肢が制限された生活であることが可視化され、私たちがその生活に思いを馳せて、院内全体で支援を必要とする人を取り残さないようにしていきたいと結びました。
2020年版HPH基準:
基準 2 サービスへのアクセスの保障
副基準 1: 権利付与と利用可能性
2.1.1私たちの組織は、(保険や経済的状態の)資格がないまたはリソース不足により人権が侵害される状態にある人々のため、状況を評価し支援を提供する手続きを有しています。
副基準 3: 社会文化的な受容性
2.3.2私たちの組織は、全ての患者の権利が尊重されることを保障するため、特別な措置を実施します。
2.3.3 私たちの組織は、社会的弱者の特別なニーズに合わせて手順がとれるようあらゆる努力を払います。
基準3 住民中心のヘルスケアおよび利用者参加の促進
副基準 5: 患者、家族、介護者、地域社会の参加
3.5.2 私たちの組織は、参加型プロセスから排除されそうになっている利用者を特定し、排除や差別のリスクがある利用者の参加を推進します。
報告:小薗 真由氏(公益社団法人福岡医療団 千鳥橋病院 医療社会科 MSW)
本件に関するお問い合わせ:千鳥橋病院 医療社会科 科長 伊規須
1750-0001 公益社団法人福岡医療団 千鳥橋病院
NEWSLETTER No.32 MAY 2026





